染織あれこれ(39)
凛として艶やか
「黒紋付き」(くろもんつき) 《ろ》

●「歌ごよみ・向島風流」 向島芸妓総出演
■写真提供・向嶋墨堤組合 13/10/26 
 正月の心改まった様子が好きだ。年の始め、花街では芸者衆が「黒紋付き」でお座敷に出る。キリッとしていて″浮き立つ様″はなんとも言えない。

 昨年、『向島をどり』に出かけた。浅草公会堂だが向島のお妲(ねえ)さんたちが日々稽古に励む「日本舞踏」や「邦楽」の発表会。今回は四回目。

 おめでたく「鶴亀」の長唄から始まったが、場所柄「三社祭」「勢獅子」が賑やかに演じられる。
 以前、歌舞伎座で観ているが三社は西川鯉三郎振付け、勢獅子は猿若清三郎。歌舞伎役者と一味違い艶やか。

 「吉野天人」では立方に馴染みのお姉ちゃんが「小天人」の役。長唄、おはやしにも一人ずつ。邦楽ではなんと言うのか″独唱″。声がとおって素晴らしい。

 最近、あちこちの劇場、ホールへ行くと客席は、圧倒的に女性陣が占める。演し物にもよるが七、八割がご婦人。九割を越えることも少なくない。が、「向島をどり」は逆転。男性、それも年配の姿が目立つ。立ち見も出るほどの盛況。

 料亭や芸妓屋の女将たちがはしゃいでいる。出を待つ半玉の振袖は華やか、「肩上げ」が初々しい。

 番付の締めくくりに「黒紋付き・引き着」での総出演。「歌ごよみ・向じま風流」。舞台設定がニクイ。「障子」を上手に設え、進行によって場面展開。引き着に島田姿の群舞。客席はまるでお座敷で「一杯やりながら」の風情。半端ではない華やかさは、絶品。

 芸者の第一正装は引き着と呼ばれる″出の衣装″。黒紋付きの裾模様に白い襟(えり)。赤い長襦袢や帯揚げのバランスが絶妙。品格と誇り、「凛(りん)」として艶(あで)やか。

 江戸文化の″粋″を今に伝える『向島をどり』。″粋″は″意気″。伝統芸能修練重ね、花柳界文化。大切な「日本人の美意識」を発展、継承して欲しい。

 芸妓衆の「美と芸」、″心意気″を実感、堪能。
船橋市民新聞 2002年 1/1発行 第39号