地方都市における文化ホール・多目的ホールのあり方『1』

はじめに
あまたある[建築]のなかで、様々な催しが行われる『ホール』と呼ばれる建築物は、そこでなされる諸行事・催事等の「様式」に不可分の関係があります。わけても「音楽・演劇・舞踊」の〃様式〃とは、もっとも不可分な関係にあります。

永い歴史のなかで、「音楽や演劇の様式」が「ホールの様式」を決めていました。また、そのホールの建築技術の発展が音楽や演劇、それ自体の様式をも変えて来ました。

 それらの結果がヨーロッパにおける「コンサートホール」「シアター」「オペラハウス」などであり、日本においては「能舞台」「歌舞伎の各座」「芝居小屋」などです。

今、現代日本の文化状況の発展、進歩、高揚は、極めて多岐、多様、多彩です。
日本独特の〃不協和音〃の楽器を持つ邦楽から、五線譜・12音階を持つ西洋音楽。シンセサイザー等による現代音楽。舞踊では、伝統的な能楽、日舞に民謡・民舞。新舞踊からクラシックバレー、モダンバレー、前衛舞踊…等々 。

演劇もしかり。文楽、歌舞伎から現代・前衛演劇、オペラ、ミュージカルと幅広くあります。そして、さらに、映画の上映から講演会、テレビ実況、会議までの対応を〃網羅〃した【多目的(多機能)ホール】という「特殊な建築様式」ができました。


ホール紹介◆ 船橋市民文化創造館『きららホール』
きららホールは平土間285平米●最大定員264名=移動観覧席136・椅子128。トラスバトン8基、美術バトン2基など機構充実。残響可変装置で音響配慮。幅広い生き生き市民文化創造多機能スペース◆設計監理:伊藤建築設計★つるや伊藤:ホールシステムプラン提案、設備参与。
開館の年から始まった【きららホール・ちょっとよりみちライブ】は平成24年1月には100回。100回記念ライブは『佐々木秀実シャンソニエ』。写真は第1回“よりみちライブ”の佐々木秀実さん。H15/10/16船橋市民文化創造館・きららホール=船橋市本町1-フェイスビル6階

多目的ホールが〃無目的〃にならぬよう  
しかし、現実には、一つの【多目的(多機能)ホール】ができますと、その「規模・舞台形 式・諸設備」のあり方で、そこで行いうる催し物(演し物=だしもの・諸行事等)の種類、内容は具体的に限定され、その演出の可能性も具体的に規定をされてしまいます。

『多目的ホール』により〃ホール文化〃の発展の方向も決まってしまいます。それゆえ、ホール建築の企画には、まず、ホール文化のビジョン・地域文化の育成方針等を明確にすることが、極めて重要になります。

現在、各地に建設されているホールは、ほとんどの場合、一見すべての文化に対応できるかの観念のもとに、実は、「無目的」に計画されているのが実情ではないでしょうか。

現実には〃多目的〃といえども、具体的にはその規模や「舞台形式・諸設備機構・音響条件・ 照明設備」等のあり方によって、そこで行える催し物や「ホール文化」が規定されるのではないでしょうか。


地方(地域)文化と中央文化  
近代日本文化の特徴は、その多様性とともに、中央集権的、全体主義的性格、その傾向が大変強いことです。

本来文化とは「人々の生き甲斐」をささえるものであり、その好み、嗜好や価値観はその時代、その地域、その人々、個人個人によって異なります。

中央文化の摂取はその地域文化の発展にのみに必要であり、その価値観や必要とする文化は、地域の人々が「自分たちの生き甲斐を支えるもの」として、自分たちで選択、活かしてその土地(地域)の「固有の地方(地域)文化」を醸成することが大切ではないでしょうか。


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